「ひまわりシステム」のまちづくり(鳥取県智頭町)
中山間地域、いわゆる田舎の高齢化がとても問題になってきています。
そこで重要になるのは、孤立したり引きこもる高齢者や集落を出さないことであり、そのためには「人」のつながりと「情報」のつながりが両立されなければなりません。
鳥取県智頭町の「ひまわりシステム」は、その代表例ともいえる取組だと思います。
鳥取県智頭町は、「杉」の産地として栄えた歴史ある中山間の町です。現在は約1万人の人口ですが、過疎や高齢化を闘いながら、住民の手で町をおこす生き残りをかけた運動を20年以上にわたり展開しています。
その中心にあるのは、郵便屋さん。
この別名を「ゆうふくシステム」(郵便+福祉)とも言うそうです。
郵便屋さんは、町役場、病院、農協の協力を得て、交通手段を持たない一人暮らしの高齢者のために日常品や薬の受取りを代行しますが、その方法はとてもユニークで微笑ましいものです。
お年寄りが町の中心にある病院で取ってきて欲しい薬があるときや、役場への書類の提出などがある場合、郵便受けに「黄色の旗」を立てます。
毎日やってくる郵便屋さんは、その旗がのぼるお宅に立ち寄り、御用を確認し、例えば、託された薬の注文書であれば、役場の福祉課に届け、福祉課は病院に連絡し、病院は薬を準備し、その薬を郵便屋さんが受け取り、再びお年寄りに薬を届ける、そんなとても人間的でありながら田舎ならではの合理的な方法で“愛のリレー”を展開します。

※図は「財団法人ニューメディア開発協会」HP
そして、現在、この取組の拡大を支えているのが、中山間地域のハンデキャップを克服する手軽で導入しやすいコンパクトな情報システムなのだそうです。
分散した集落を一般公衆回線で結び、実効的な距離を短縮して地域の生活空間を拡大するもので、町役場や集落、福祉機関、公共機関(病院、小学校)、商店の各関係者の利用のもと、それぞれから地域への情報発信が行われています。
利用する側も、電話かFAXのような手軽さで文書や地図データを交換でき、手書きの申込書をCCDカメラで撮って送れる機能や、防災・環境など地域の状況を把握する現場画像の機能、高齢者への声かけを促進するヘルパーなどの訪問予定の機能も使えるということで、注目されます。
(1)情報の発信・受信と注文予約の支援機能
(2)行政サービスの支援機能
(3)商店サービスの支援機能
(4)高齢者への声かけ支援機能
(5)地域の防災支援機能
(6)地図機能
(7)ユーザの管理機能
(8)地域情報ネットワークの構築が容易
現在の社会風潮では、高齢者が取り残されたような田舎は、非常に無機的に切り捨ての方向に向かっています。しかし、どんなところでも、「住めば都」。先人や今住む人たちの思い出がたくさん詰まった大事な場所です。
智頭町の取り組みは、そういう逆境にある町を、限られた資源や閉じられた地域の内部活性力により再生させている大変稀有な例だと思います。
田舎暮らし志向の方々には、1つの重要な判断材料になるかもしれませんね。
いまさらながらではありますが、この智頭町の取組は、「ひまわりシステムのまちづくり」(はる書房・1997年)で紹介されています。