イギリス・スコットランドの農村事情
9月23日~29日まで、エジンバラ近郊(スコットランド)、ニューキャッスル近郊(イギリス)の農村に行ってきました。
「Ageing and Place Making」というテーマでの日英共同研究、この共同研究は、ニューキャッスル大学と北海道大学とが実施しているもので、主に、高齢者の流動の実態と都市部・農村部に与える影響を比較するものです。
私は、大学と関係ありませんが、北海道チーム(4名)にお誘いをいただき、貴重な機会を得ることができました。
日本では、2007年問題(実際には際立った動きが見られないが・・・)といわれる団塊世代の大量退職を機にした移住者誘致合戦が北海道を起点に国、そして全国に巻き起こりました。
既にイギリスでは、余生を自然豊かな地域でという高齢者が、都市部から農村部に移り住む動き進み、高齢者の著しい増加が社会問題化しているということです。
このようなイギリスの現状から見ると、北海道が発表している、「高齢者が移り住むと地域に大きな経済効果が生まれる」という理論が目からうろこだったそうです。
さて、私の関心はというと、「移住者は、地域づくりや地域産業に貢献しうるか」ということでした。
日本の現在の状況では、単なる「移住」に対しては実は懐疑的で、娯楽的なそれは、地域経済に何らかの貢献をしたにせよ、人材の不足にあえぐ農村の意識改革や農村の過疎イメージの払拭に必要なパワーにはならないだろう、という見方です。
移住者が、そこまでを望まないことも重々承知ですが。
もっともっと、企業が移住という動きから生じる利ざやを得ようとする動きとは、一線画し、受け入れる地域や都道府県レベルでの戦略が必要だと考えています。
「移住者は、地域づくりや地域産業に貢献しうるか」
スコットランドやイギリスでは、多くの農村の活動家や行政マンとの意見交換を行いました。
その中でも、大変印象が深かったのは、2つの街での取組みです。
◆Fife Arts協同組合(スコットランド)
都市部で博物館長をしていたジョンさんは、数年前に本地域に移り住んだ移住者。田舎の素晴らしい環境に憧れてやってきたが、地域の力が十分に引き出されていないことに驚き、自分の経験を活かしアートのワークショップができるまちづくりにチャレンジすることを決意。
既に建築後300年は経とうかという元役場(空き家)の建物を買い取るため、WASP(アート活動を行うチャリティ組織)に働きかけ、購入資金(2万ポンド約5百万円)を捻出。
さらに改修費用40万ポンド(約1億円)を捻出するため、スコティッシュ・アート協会、地元自治体、社会貢献企業、EU(LEADERプロジェクト)など9つの団体から資金調達を図ったそうです。
現在は、アーティストの間で大変人気が高い農村アトリエに改修中で、2人づつのルームシェアで8つの部屋(計16人のアーティスト)をつくるのだとか。そして、地元の子ども達や住民に様々なワークショップを提供するのだそうです。
注目すべきは、個人の思いであっても地域活性化に資する責任体制を有する“戦略的な取組”については、政府が受け止め人材・金銭面で支援するという相補関係。キーとなっているのはEUが主導するLEADER(Liaison Entre Actions de Developpement de l’Economie Rulai)という仕組みです。詳しくは次回以降に紹介しますが、経済的に不利な地域を重点対象とする農村住民が主体となり実施する農村活性化事業です。
このプロジェクトの枠組みの一部にジョンさんの活動が取り上げられたため、活動の信用力が飛躍的に高まり、資金調達が円滑に進んだといいます。
◆Douglas Water地区(スコットランド)
この集落は約100人の集落ですが、ボランティアが活躍するトラスト(市民の寄付や寄贈により運営される民間組織・運動)の活動がどれだけの力を発揮しているのかを目の当たりにしました。(この例は移住者とは関係ありません。集落会社という感じ)
The Rural Development Trustの「Community Transport & Training」(コニュニティ交通とトレーニング)は、農村地域の足となる交通9台の運営、ミニバスの貸し出し事業、廃油ディーゼル燃料の生成、風力による電力生成を有機的に連携させる事業と、移動バスによるIT環境やトレーニング機会の提供を行っています。
バス9台の運転手は、いずれもボランティアが行い、その育成されたドライバーを民間のバス会社に供給しているそうです。明日の運行状況や予約受付状況は随時コンピューター管理されていました。
廃油ディーゼル燃料は、地域のレストランから出る廃油を譲り受け、7千ポンド(約1.8千万円)で購入した機械で、自前で燃料生成をしています。この廃油燃料は、イニシャルコストを除けばガソリンの半額程度のコストでまわすことができるということで、4000リットル/月を生成し、近い将来バス全車に供給予定とのことです。
移動IT車、これは驚きました。人口密度が極めて薄い田舎を回りながら、IT基盤がカバーしていない地域の孤立した高齢者に集会・交流の場をつくるとともに、インターネットスキルをつけてもらおうという狙いのようです。
この取組においても先ほどのLEADER事業が適用されており、人材・資金そして行政のバックアップを全面的に受けて事業運営がされています。